料理研究家の土井善晴をはじめ、現代の料理界を牽引する多くの専門家たちも、彼女が示した「家庭料理の尊さ」に深い共鳴を寄せる。土井が提唱する「一汁一菜」の思想とも通底するのは、料理は単なる栄養摂取の作業ではなく、人と人をつなぐ情愛の表現であるという確信だ。
「味付けとは、相手を思う分量のこと」。彼女はそう語っていた。体調の優れない家族には薄味に仕立て、汗を流して帰ってきた者にはしっかりとした旨味を届ける。調味料の黄金比率という机上の数値を超えた場所にある、生きた配慮。それこそが、彼女の料理が「心に染みる」と称賛される最大の理由だった。