田中好子さんの芸能界での足跡は、日本のエンターテインメント史そのものです。1973年に伊藤蘭さん(ラン)、藤村美樹さん(ミキ)とともに「キャンディーズ」として歌手デビュー。「年下の男の子」「春一番」「微笑がえし」など数多くのメガヒットを連発し、社会現象を巻き起こしました。1978年4月、後楽園球場での伝説的な解散コンサート「普通の女の子に戻りたい」を残してグループは解散します。
一時引退の後、女優として復帰した田中さんは、アイドルの肩書を完全に払拭する圧倒的な演技力を発揮します。決定打となったのが、今村昌平監督の映画『黒い雨』(1989年)でした。広島原爆の悲劇に翻弄されるヒロイン・高丸矢須子役を鬼気迫る演技で体現し、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめとする国内の映画賞を総なめにしました。
さらに2001年のNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』では、ヒロインの母親・古波蔵勝子役を好演。明るく大らかで家族を包み込む“お母さん”の姿は日本中のお茶の間を魅了し、彼女の代表的なパブリックイメージとして定着しました。病魔と闘いながら演じ続けた役柄の数々は、今も日本のドラマ・映画史に燦然と輝いています。