夏休みの風物詩だった「夏の友」が学校現場から急速に姿を消した背景には、単なる偶然ではなく教育現場の構造的な必然性が存在します。廃止の流れを決定づけた主な理由は次の3点に集約されます。
第1の要因は、学校現場で急速に進んだ教員の働き方改革です。数十年前であれば、夏休み明けの新学期に担任教員が児童数十人分の分厚い冊子を回収し、算数の計算から日記のコメント、工作の確認までを一手に引き受けて手作業で赤ペンを入れる光景が一般的でした。しかし、時間外労働の削減が厳しく叫ばれるなかで、新学期初週に集中する膨大な採点業務は教員の過重労働を生む温床として問題視されるようになりました。現場の負担軽減を図る観点から、冊子の一括購入や配布そのものを取りやめる自治体が相次いだのです。
第2に、文部科学省主導で全国の小中学校に整備されたGIGAスクール構想によるデジタル化がトドメを刺しました。1人1台配布されたタブレット端末やノートPCには、子どもの習熟度に合わせて自動で出題・瞬時に自動採点を行ってくれるAI学習ドリルが導入されています。紙の冊子を印刷して配る必要性が薄れただけでなく、解いたその場でフィードバックが得られるデジタル教材のほうが学習効率の面でも優位と判断された結果です。
第3に、「答え」の取り扱いをめぐる形骸化も大きな要因でした。本来は自力で解くための教材でありながら、長期休暇の終盤に解答冊子を丸写しするケースが後を絶たず、学力定着としての教育効果に疑問符が投げかけられていました。保護者への丸つけ負担を強いることへの批判や、答えを学校で事前回収する手間の煩雑さも重なり、一律配布の意義そのものが失われていきました。