結論から述べると、犬に梨の「果肉部分」を与えることは問題ありません。梨には犬に対する直接的な中毒成分は含まれておらず、安全に食べられるフルーツに分類されます。しかし、それはあくまで適切に処理された果肉に限った話です。普段私たちが切り落とす皮、種、芯には、愛犬の生命を脅かしかねない明確な危険因子が潜んでいます。
ネット上の一部で「梨には中毒性がある」と囁かれる背景には、種に含まれる微量の中毒成分の存在があります。梨はリンゴやモモと同じバラ科の植物であり、その種子には「アミグダリン」という青酸配糖体が含まれています。種を噛み砕いて体内に取り込むと、消化管内でシアン化水素(青酸)を発生させ、呼吸困難や痙攣といった重篤なシアン中毒を引き起こす危険性があります。数粒誤飲した程度で即座に致死量に達するケースは稀ですが、体の小さな超小型犬では深刻な影響が出かねません。
さらに臨床現場で獣医師が最も警戒しているのが、硬い芯の丸呑みによる誤飲・窒息・腸閉塞(イレウス)のリスクです。梨の芯は繊維が極めて硬く、犬の胃液でもほとんど消化されません。愛犬がゴミ箱を漁って芯を丸呑みしてしまい、開腹手術を余儀なくされる救急搬送事例は後を絶ちません。また、外皮は農薬の残留懸念だけでなく、不溶性食物繊維が強固なため激しい下痢や嘔吐の引き金となります。与える際は、皮を完全に剥き、芯と種を綺麗に取り除いた果肉のみに限定しなければなりません。