『恋は雨上がりのように』の結末における最大のテーマは、タイトルの通り「雨宿りの終わり」です。アキレス腱の怪我によって走る理由と居場所を失っていた橘あきらにとって、ファミレス「ガーデン」でのアルバイトと店長・近藤正己への恋心は、降りしきる絶望の雨から身を守るための避難所でした。一方の近藤にとっても、若く眩しいあきらから寄せられる真っ直ぐな好意は、かつて小説家を目指して挫折した青春の残滓と情熱を呼び覚ます契機となります。
物語のクライマックスにおいて、あきらは近藤への想いを募らせますが、近藤は大人の分別と誠実さをもって一線を越えることはありませんでした。近藤があきらに贈った「青葉の季節に、走るのをやめたらダメだ」という趣旨の数々の名言や励ましは、彼女が陸上という本来の居場所へ戻るための強固な足がかりとなります。
原作漫画の最終回(第82話)では、あきらはアキレス腱の手術・リハビリを経て再びグラウンドへと戻り、親友である喜屋武はるかとの絆を取り戻します。そして近藤もまた、長年封印していた原稿用紙に向かい、執筆活動を再開します。二人は恋愛関係に発展することなく、お互いの人生を肯定し合いながらそれぞれの道を歩み出すという、極めて美しく気高いエンディングを迎えました。