26年間という途方もない歳月にわたり「ドラえもんの声」として日本人の心に寄り添い続けたのが大山のぶ代だ。独特のハスキーで温かみのある声、のび太を包み込むような母性的な演技は、ひとつの完成されたスタンダードとなった。
だが、時代の移り変わりとともに転換点は訪れる。2005年春、メインキャスト5人全員の総交代という前代未聞のリニューアルが決行された。大山からバトンを受け取ったのは水田わさび。プレッシャーは想像を絶するものだった。「前任者の真似ではなく、自分なりのドラえもんを演じてほしい」という制作側の指針のもと、水田は元気で少し生意気、等身大の友だちのような新しいドラえもん像を泥臭く築き上げた。20年以上の歳月が流れた現在、水田版ドラえもんは若い世代にとっての紛れもない「本物」として定着している。