死刑制度賛成理由の根幹には、法哲学における「被害者感情と応報刑」の理念が存在します。近代刑法は単なる私的復讐を禁じる代わりに、国家が法に基づいて正当な処罰を下すことで社会正義を実現する仕組みをとっています。
無差別に尊い命を奪われたり、残虐極まりない手口で家族を奪われた遺族にとって、犯人が刑務所で生き続け、食事や医療を受けながら天寿を全うすることは到底受け入れがたい現実となります。国家が犯した罪の重大さに釣り合う刑罰(等価処罰の原則)科さない場合、法に対する国民の信頼が損なわれ、私的制裁の誘発につながりかねません。
加害者が奪った生命の価値と引き換えにする唯一の代償として死刑を位置づける考え方は、理屈を超えた人間的共感と道徳的正義に深く結びついています。罪を犯した分だけの報いを受けるという応報の思想は、過酷な被害を受けた人々の尊厳を守る最後の砦として機能しています。