なぜ毒素の蓄積が、手首を反らせるという特定の動作で「脱力」を引き起こすのか。神経内科学的な視点から見ると、脳幹や大脳基底核における姿勢保持メカニズムの障害が関係している。通常、腕を前に伸ばして維持するとき、脳からは姿勢を保つための持続的な運動指令が出され続けている。
世界の標準的な医学指標であるMSDマニュアルでも解説されている通り、代謝性脳症における羽ばたき振戦は、筋肉の連続的な収縮を維持する脳の電気信号が一時的に中断されることで生じる。神経細胞に毒素が干渉した結果、数ミリ秒から数百ミリ秒間にわたって筋電図上の活動が完全に消失する。力が入らなくなって手が垂れ下がり、直後に脳が慌てて姿勢を戻そうと反応する。この「落ちては戻る」ループが、あの独特のパタパタとした羽ばたき運動を生み出しているのだ。