当時23歳だった下村早苗は、傍目には派手な身なりで夜の街を遊び歩く身勝手な母親として描かれた。だが、その素顔を丁寧に紐解いていくと、幼少期から繰り返された家庭内暴力、親からのネグレクト、そして若年での離婚による精神的な孤立という、底知れぬ影が浮かび上がる。
三重県で育ち、周囲からは真面目で心優しい少女と見られていた彼女が、なぜ我が子の命を奪う結末へと転落してしまったのか。離婚後、実家との関係も途絶え、頼るべき大人も友人もいない大都会の片隅で、彼女は風俗店で働きながら2人の幼児を育てていた。水道や電気が止められ、ゴミが散乱する部屋で、彼女自身もまた現実から解離していくように精神の均衡を崩していたという。大阪2児放置死事件の本質は、個人の異常性だけでなく、極限状態のワンオペ育児が引き起こした破滅的な悲劇でもあった。