男性器切断の事件史を振り返る上で、1936年に発生した「阿部定事件」は外せません。荒川区の待合で発生したこの事件では、愛人関係にあった男性を絞殺後、局部を切断して逃走した女性が逮捕され、当時の日本中を騒然とさせました。
虎ノ門の事件が「配偶者を奪われた怒りや報復」という敵対感情から生じたのに対し、阿部定事件は「相手を独占したい、永遠に自分だけのものにしたい」という病的な執着と狂言的愛情が動機でした。時代や背景は異なるものの、いずれの事件も極限状態に達した愛憎感情が肉体的な破壊衝動へ直結した典型例として語り継がれています。