倉吉ウイスキーの公式サイトや商品POPで大きくアピールされているのが、海外コンペティションでの受賞実績です。米国のサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SFWSC)や英国のワールド・ウイスキー・アワード(WWA)において、倉吉や松井のシリーズは頻繁に金賞やカテゴリー最高賞を受賞しています。
これに対し、ネットコミュニティでは「過去の経緯があるのになぜ賞を獲れるのか」「広告費で買った賞ではないのか」といった懐疑的なネットの反応が頻繁に見受けられます。しかし、ここには酒類コンペティションの仕組みに対する誤解と、倫理観のズレが存在します。
国際的なスピリッツコンペティションの審査は基本的に、ブランド名や出自を隠したブラインドテイスティング形式で実施されます。審査員は「松井酒造が過去にどのような売り方をしたか」という日本のローカルな炎上事情を知らされず、目の前のグラスに注がれた液体の香りと味のみを純粋に点数化します。つまり、公式ブレンドとしての完成度自体は国際基準で一定の合格ラインに達しているからこそメダルを獲得しているわけです。
それにもかかわらず愛好家の反発が収まらないのは、酒造メーカーとしての歩みに対する「ストーリーの信憑性」がウイスキーの価値に直結するからです。消費者はウイスキーを単なるアルコール水溶液として飲むのではなく、風土、歳月、作り手の職人魂という文化的背景にお金を払っています。ブラインド審査で美味しかったとしても、企業の販売姿勢に誠実さを感じられなければ、ファンは心から称賛できません。この認知的ギャップが、受賞歴とネット上の実効評価のねじれを生む正体です。