窒息事故が発生した際、救急車が現場に到着するまでの全国平均約9分間を無為に過ごせば、救命の可能性は絶望的になる。日本救急医学会が策定するプロトコルに基づいた緊急救命ガイドを頭に叩き込み、直ちに物理的な除去を試みなければならない。
意識がある患者に対して最優先で行うべきは「背部叩打法」である。傷病者の後方または側面に立ち、片手で相手の胸を支えて前傾姿勢を取らせる。もう一方の手のひらの付け根(手掌基部)を使い、左右の肩甲骨のちょうど中間あたりを、躊躇することなく力強く何度も連続して叩き上げる。叩く強さに手加減は不要だ。肋骨の骨折を恐れるあまり力が弱ければ、気道の内圧が上がらず餅は出てこない。
背部叩打法で効果が得られない場合、意識がある大人に対しては「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」を併用する。背後から両腕を回し、一方の手で握り拳を作って親指側を相手のみぞおちのやや下、へそより上に当てる。もう一方の手でその拳を握り、斜め上方の頭部へ向けて素早く強く引き上げるように圧迫する。ただし、ハイムリック法は内臓損傷のリスクを伴うため、妊婦や乳幼児には絶対に実施してはならず、実施後は速やかに医師の診察を受けさせる必要がある。