下灘駅がこれほどまでに旅情をかき立てる最大の理由は、プラットホームに立った瞬間、視界いっぱいに広がる青い海と空の圧倒的な開放感にあります。ホームに設置された素朴な上屋と木製ベンチ、その背後に広がる伊予灘の水平線は、どこを切り取っても一枚の絵画のような美しさを誇ります。
鉄道ファンのみならず一般の観光客にもその名が定着した契機は、JRグループが発行する「青春18きっぷ」のポスターです。1998年冬(「前略、僕は日本のどこかにいます。」)、1999年冬、2000年冬と計3回にわたりポスターの舞台となり、旅の情緒を象徴する聖地として不動の地位を築きました。駅舎内には当時の記念写真や思い出を綴る駅ノートが大切に保管されており、訪れる旅人の温かい交流の場となっています。
国道378号(夕やけこやけライン)の開通によって物理的な波打ち際からは少し離れたものの、一段高い高台から見下ろす海のパノラマは今なお健在。2026年現在も、海風を感じながら静かに列車を待つ贅沢なひとときを求めて、国内外から多くの観光客が足を運んでいます。