人間には、自らの安全が脅かされない境界線の内側から、他者の極限状態や悪意を覗き見たいという根源的な欲求が存在する。心理学者はこれを「安全な恐怖の疑似体験」と呼ぶ。完全なフィクションよりも「実際に起きたこと」という事実の重みが、作品に圧倒的なリアリティと緊張感を与えるのだ。しかし、その知的好奇心やスリルへの欲求が、他者の本物の絶望と苦痛の上に成り立っているという事実から、読者は目を背けることはできない。消費する側の倫理観もまた、厳しく問われている。
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