ガラガラと引き戸を開けると、立派な太い梁と土壁の温もりが出迎えてくれる。鹿沼市内の旧市街地に点在する古民家ベーカリーは、単にパンを売る場所ではなく、訪れる者の時間を優しく巻き戻す空間そのものだ。
ここで味わえるのは、時間をかけてじっくり自然発酵させたサワー種や自家製酵母を用いたカンパーニュ。外皮はガリッと香ばしく、中は驚くほどしっとり。古い木材が持つ独特の湿度や静寂が、パンの発酵プロセスにも良い影響を与えているかのようだ。縁台に腰掛け、淹れたてのハンドドリップコーヒーとともに味わう一口は、都会の喧騒を忘れさせる至福のひとときと言える。