「たかがパン1個に15ドル?」と驚くのは外の人間だけだ。
物価高が続くニューヨークにおいて、ベーカリーの価格設定は確かにハイエンド化している。しかし、顧客は決して不満を漏らさない。ノルマンディー産の無塩AOP発酵バターをふんだんに使い、3日間かけて折りたたまれたクロワッサン。一口噛めば、口内に広がるのはもはや主食ではなく「洗練されたディナーディッシュ」と同等の満足感だ。外食レストランで100ドルのコースを食べる代わりに、15ドルの究極のデニッシュと5ドルのシングルオリジンコーヒーで至福の時を味わう。パンは最も手頃な「プチラグジュアリー」として、生活者の心を癒やしている。