今でこそアニメ制作における「現地取材(ロケハン)」は当たり前となったが、そのパイオニアとなったのがまさに本作である。1973年、若き日の高畑勲、宮崎駿、小田部羊一らはスイスのマイエンフェルトへと飛び立った。まだ海外渡航が容易ではなかった時代に、彼らは現地の空気感、民家の構造、山々に差し込む光の角度までを徹底的に観察し、スケッチに収めた。
この異様なまでのロケーション主義が、作品に圧倒的な説得力を与えている。2026年の高度なグラフィック技術で作られたアニメーションと比較しても、本作の背景描写や空間の奥行きには一切の狂いがない。作り手の眼差しが捉えた「本物のスイス」が、アニメーションというフィルターを通じて半世紀後の私たちにもそのまま伝わっているのだ。