ツインテールをなびかせ、屈託のない笑顔を振りまく姿。それが長年、多くの人々が抱いてきた初音ミクのパブリックイメージだった。だが、今のSNSやアートプラットフォームを覗いてみてほしい。画面の向こうから突き刺さるのは、冷徹なまでに研ぎ澄まされた視線や、荒廃した近未来都市に一人佇む影のあるシルエットだ。
この地殻変動の背景には、第一線で活躍するイラストレーターたちの意識の変化がある。「かわいさ」はすでに前提条件。その上で、どこまで観客の感情を揺さぶり、ゾクゾクさせる表現ができるか。彩度を極限まで抑えたモノトーンの世界に、象徴的なエメラルドグリーンをひとしずく落とす。それだけで、静寂を切り裂くような強烈なコントラストが生まれるのだ。