一方で、学術的・生物学的な観点から「シジミ目」という用語をひもとくと、全く別の世界が広がっている。生物の分類学において、かつてマルスダレガイ目に含まれていたシジミ科などは、分子系統解析の発展により「シジミ目(Cyrenida)」として独立したグループに再編された経緯を持つ。淡水や汽水域に生息し、環境指標生物としても重要な二枚貝たちだ。
「では、本物のシジミに目はあるのか?」という疑問を抱く人も多いだろう。実は、二枚貝の多くには人間のようなレンズを持った眼球はないものの、外套膜(がいとうまく)のフチに光の明暗を感じ取る「外套眼(がいとうがん)」や感光細胞を備えている種が存在する。俗称としての「シジミ目」は見た目の形状に由来する例え話だが、生物学の「シジミ目」は生命の進化と環境適応が生み出した精妙な分類体系であり、両者は明確に区別して理解する必要がある。