女王蜂の楽曲を一度でも聴けば、誰しもがその歌声の振り幅に愕然とする。地声を這うような重低音のグロウルから、天空へ突き抜ける美しいオペラ的ファルセットまで、一曲の中で何重人格もの声色を使い分ける。単なる「歌がうまい歌手」という表現では到底収まりきらない。
息をのむのは、その発声切り替えの滑らかさと感情の振幅だ。怒り、悲哀、狂気、そして至上の愛。感情のメーターが振り切れた瞬間でも、ピッチや音域のコントロールを一切失わない。ライブ会場の静寂を破る一音だけで万単位の観客の呼吸を支配するそのヴォーカルは、もはや楽器というよりは一つの意志を持った生き物のようにすら思える。