埼玉県の気象を複雑にしているもう一つの要素が、西部を占める秩父エリアと東部平野部の巨大なギャップだ。秩父盆地は典型的な内陸性気候を呈し、放射冷却による朝晩の冷え込みが非常に激しい。同じ県内でありながら、さいたま市とは最高・最低気温で5度以上、時には10度近い差が生じることもある。
秋から冬、そして初春にかけての時期、秩父山地から吹き下ろす冷たく乾いた強風(いわゆる「赤城おろし」や秩父からの局地風)は、平野部へ向かって一気に駆け抜ける。この風が乾燥を加速させ、体感温度を劇的に押し下げるのだ。
秩父方面から都心やさいたま市内へ通勤・通学する人々にとって、朝出かける際の服装選びは極めて切実な問題だ。朝の自宅周辺の寒さに合わせて着込むと、日中の大宮や都心では汗ばむほどになり、逆に軽い上着だけで出かけると帰路の地元駅で凍えそうになる。レイヤリング(重ね着)の工夫が、埼玉生活の知恵として欠かせない。