この楽曲の価値を揺るぎないものにしている最大の要素は、作詞家としても希有な才能を持っていた村下孝蔵による圧倒的な情景描写だ。冒頭の「五月雨は緑色」という鮮烈な一行をとってみても、雨そのものの色彩ではなく、濡れた若葉が光を反射して雨に色を付ける風景が見事に切り取られている。五感にダイレクトに訴えかける、高度な歌文芸の到達点だ。
現代のポピュラーミュージックによく見られるストレートな感情表現、すなわち「好きだ」「会いたい」といった直接的な語彙はここには一切登場しない。「放課後の校庭」「夕暮れの影」「浅い夢」といった具体的な情景の積み重ねが、聴き手各自の胸の奥にある個人的な思い出や原風景を呼び覚ます。言外の余白を残す日本独自の美意識が、極上のポップソングとして結実している。