織田信長が倒れ、徳川家康が江戸幕府を開く直前の慶長元年、この店はその産声をあげた。以来、14代にわたり暖簾を守り続けている。看板メニューは驚くほどシンプルだ。職人がすり鉢で丁寧に擂り下ろした自然薯に、自家製の白味噌と出汁を合わせ、麦ご飯にかけて食べる「とろろ汁」である。
「400年以上、変えないこと」は決して平坦な道ではない。時代ごとに米の品種も違えば、芋の育つ土壌も変わる。しかし、丁子屋の職人たちは毎日、その日の気温や湿度、自然薯の個性を掌で確かめながら、秘伝の配合を微調整する。そのストイックな手仕事が生み出す滑らかさは、一度味わえば記憶から絶対に消えない。