日本武道館の重い扉をくぐる参列者の顔ぶれは、この10年で激変した。
かつては黒の喪服に身を包んだ妻たちが、亡き夫の遺影を抱きしめ涙を流す光景が日常だった。しかし現在、そうした参列者はごくわずかだ。参列団体の中心は、孫やひ孫の代へと完全に移行している。参列者の一人、祖父をソロモン諸島で亡くした都内の30代女性は「祖父の顔すら写真でしか知らない。けれど、この場に立つことで、自分が受けてきた平和の恩恵の重みを感じる」と静かに語った。
「実体験としての戦争」を知る世代の減少は、単なる数値の問題ではない。感情の体温を伴った証言が失われることを意味する。語り部たちが高齢で壇上を去る中、記憶の断絶を防ぐ手がかりをどこに求めるべきなのか。現地に足を運ぶ遺族の減少に伴い、都道府県ごとの参列枠に空きが生じるケースも目立ち始めている。