生成AIによる音楽や自動生成動画が溢れる時代にあって、彼女の武器は真逆の「歪み」と「人間味」にある。完璧にピッチ補正されたボーカルとは対照的な、息遣いや揺らぎ。失敗を隠さず、撮影中のハプニングさえもそのまま共有するスタイル。それが画面の向こう側の観客に「これは自分と同じ痛みを味わっている人間の声だ」と確信させる。
「上手い歌」なら街に溢れている。だが、「自分のために歌われている」と感じさせる力を持つ表現者は一握りだ。ライブ会場に足を運ぶファンの層を見ると、Z世代の若者から、日々の仕事に追われる40代・50代まで驚くほど幅広い。記者の取材に応じた30代の会社員女性はこう語った。「彼女の歌を聴いていると、上手く生きられない自分を責めなくていいんだと思える」。