都内の版画工房やオープンスタジオでは、ここ数年で受講者の層がガラリと変わった。以前は余暇を楽しむシニア層が中心だったワークショップに、最近では20代から30代のクリエイターやITエンジニア、デザイナーらが殺到しているという。
作業は極めて地道だ。磨き上げられた銅板にニードルを滑らせると、キリキリというかすかな金属音が静かな室内に響く。自分の指先の力加減一つで、線の太さや強弱がどこまでも変化する。一度刻んだ線は容易に消せない。だからこそ、作業中の集中力は極限に達する。「まるでマインドフルネスの時間のよう」と参加者たちは口を揃える。思考を画面から切り離し、物質と一対一で向き合う時間が、多忙な現代人の精神的な休息場所になっているのだ。