日本三大秘境のひとつとして数えられる祖谷の谷。その谷底、吉野川の支流沿いに湧き出る源泉を目指すプロセスからして、すでに非日常の体験は始まっている。宿のロビーから傾斜42度、距離約170メートルの断崖を自社専用のケーブルカーで静かに下っていく。所要時間は約5分。ガラス越しのシームレスな景色には、四季折々の新緑や紅葉、冬の霧氷が包み込むようなスケールで迫る。
眼下に現れるのは、川のせせらぎがダイレクトに響く白濁の露天風呂だ。毎分150リットル以上湧き出る硫黄泉は38度前後とややぬるめで、肌にまとわりつく細かな気泡が心地よい。長時間の入浴でも身体に負担がかからず、自律神経がじわじわと解きほぐされていく感覚を実感できる。スマホを置いてただ川の流れと湯煙を見つめる時間は、2026年の現代人にとって最大の贅沢と言っていいだろう。