階を上がり、あえて照明を落とした展示エリアへ進むと、空気感がガラリと変わる。そこに広がっているのは、大正時代の門司港の街並みを原寸大に近いスケールで忠実に再現した「海峡レトロ通り」だ。木造のハイカラな建造物、レトロな看板、路上に佇むバナナの叩き売り露店など、細部まで徹底的に作り込まれた空間は、どこを切り取っても絵になる。
石畳の道を歩いていると、路面電車の走る音や人々の話し声がどこからともなく聞こえてくる。実際に手に取って触れられる展示や、当時の生活臭まで漂ってきそうなリアルな造形には脱帽するしかない。単なる写真撮影スポットにとどまらない。大正という激動の時代を生きた人々の息遣いが、確かにこの空間には宿っている。若いカップルがアンティークな路地で写真を撮り合う傍らで、地元のガイドが熱っぽく当時の貿易エピソードを語る光景が実に微笑ましい。