演劇界の第一線で舞台を支え続ける父と、幾多のメガヒット曲を生み出してきた母。一般的に見れば圧倒的に恵まれた環境だが、その舞台裏は決して甘やかされたものではなかった。幼少期の彼を取り巻いていたのは、常に真剣勝負で作品に向き合うプロフェッショナルたちの熱気である。
リビングで鳴り響くギターの音色や、劇場の楽屋に漂う独特の緊張感。それらは彼にとって特別なものではなく、息を吸うように自然な日常の景色だった。本物に触れ続けてきた時間が、彼の圧倒的な耳の良さと、空間を捉える鋭利な観察眼を養ったことは間違いない。だが、彼は両親の作ったレールの上を走ることを選ばなかった。